Rika 1歳の抵抗-超赤子現る
飛行機
私の住んでいる地域では、良く自衛隊の戦闘機が訓練で飛んでいる。
とはいえ、基地がすぐ傍にあるわけではないのだが、普通の土地に比べれば多い方だ。
轟音を上げながら高速で空を飛ぶ飛行機は空に一筋のくもを残しながら山の向こうへ消え去っていく。
真昼の空に突如現れては消えていくそれに、幼い私はたまらない恐怖を覚えた。
殺人の道具だとか、1機でン億とかそういう事ではないのだが
まだおぼつかない足で歩き始めた私は飛行機というものに言い知れぬ恐怖を感じ、その音が聞こえるたびに泣いていた。
何故そこまで恐怖するのか今となっては思い出すことも出来ないが、その頃私の面倒を見ていた姉もその異常な怯え方に、未だに頭をかしげる。
「私、前世は飛行機で死んだんじゃないかねぇ?」
「ああ、そうかもね~」
高校を出て久方ぶりに会った姉は、その話題になるとさらりとそう言った。
その頃まだ幼かった姉。
成長するごとに忘れていった記憶ではなく、鮮明に語られていく言葉にその時の自分がどれほどの恐怖に震えていたのかと思った。
「そういえば、アンタ飛行機見て泣きながら婆ちゃんの肩までよじ登ってたよね?」
・・・・・・・・・・・・・なに?
「ウソ~ン?」
「本当」
・・・・・・・・・・・・・・・うそ~ん・・・。
って、ちょぉ待てよ。
私その頃赤子ですよ?
そんな小さなお子様が大人の肩まで泣きながらよじ登るなんて・・・・。
「マジ?」
「すごかったよ~。ってか、びっくりしたね」
そりゃぁビックリするでしょうよ。
驚きもものき20世紀だよ。
ってか、聞いた私も驚きだよ。
不思議体験アンビリバボーさ。
世界超人スペシャル出れるんじゃないか赤子の私。
ってか、出れるだろ?
これを火事場の馬鹿力というのか・・・。
小さなボディーにビッグな力を持っていた赤子の私よ
屋根の上に上らなかったので今日は許してあげましょう。
っつーか、そんだけの力と根性があるなら、何で姉からミルク取り返さなかったんだよ?
脳の片隅にあるのは青と白の空。そこにある鳥のような黒い影をを見上げている小さな頃の自分。
思い出せるのは1枚の写真のような記憶だけだった。
しかし、人の記憶は曖昧なもの。
決して自分が覚えていることだけが全てではないのである。
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